歯科医師コラム

誰も教えてくれない! 「なぜ売上400万円のドクターの給料は40万円なのか?」― 歯科医院の人件費構造を“1人のドクター”で分解する ―

歯科医師になって3年。

無我夢中で診療をしてきて、気づけば月に400万円近い売上も作れるようになった。

それなのに、通帳を見ると月給は40万円。

「……あれ?」

「これ、普通なの?」

「もしかして、搾取されてる?」

そう感じ始めた先生は、決して少なくありません。

でもその違和感、感情だけで判断するのは少し早いかもしれません。

一般企業の「人件費30%」を、そのまま当てはめていないか?

よく言われますよね。

「人件費は売上の30%くらい」。

この感覚で考えると、

月400万円の売上 × 30% = 120万円。

「じゃあ、給料が40万円って安すぎない?」

そう思うのも無理はありません。

ただし、ここで多くの歯科医師が一つ大きな勘違いをしています。

歯科医院の「人件費30%」は、思っている30%じゃない

一般企業でいう人件費30%には、

  • 給与

  • 賞与

  • 社会保険料

  • 退職金引当

などが含まれます。

これは基本的に「人にしかお金を使わないビジネス」の話です。

一方、歯科医院の人件費30%はまったく意味が違います。

そこに含まれるのは、

  • 院長給与

  • 勤務医給与

  • 歯科衛生士

  • 歯科助手

  • 受付

  • 全スタッフの社会保険料

全員分です。

しかも歯科医院は、人以外のコストが異常に重い。

歯科医院特有の“重たい固定費”

歯科医院では、毎月こんなコストがかかっています。

  • 技工料(7〜10%)

  • 材料費・消耗品(5〜8%)

  • 家賃・ローン(8〜12%)

  • 設備減価償却(CT・ユニット)

  • 広告費・IT・レセプト

  • 医療廃棄物・感染対策

これだけで、人件費とは別に【30〜40%】が消えます。

全体をざっくり分けると、こうです。

  • 人件費(全体):28〜32%

     └ 院長:10〜15%

     └ 勤務医:10〜15%

     └ DH・DA・受付:12〜18%

  • 技工・材料:12〜18%

  • 家賃・設備:10〜15%

  • その他経費:5〜10%

利益が10〜15%出ていれば、経営としては優秀な部類です。

人件費30%は「1人のDr」の取り分ではない

ここが一番重要です。

売上400万円は、あなた一人の力で生まれた数字ではありません

その400万円を作るために必要なのは、

  • 歯科衛生士(メンテ・P処)

  • 歯科助手(アシスト・準備・片付け)

  • 受付(会計・予約管理)

  • 技工(外注・院内)

  • 材料・消耗品・設備

つまり400万円は、完全なチーム売上です。

多くの医院ではまず、

「最低保証の固定給(例:40万円前後)」を先に決め、

そこから逆算して人件費と歩合を設計しています。

だから、人件費30%=120万円は

院長・勤務医・DH・DA・受付の“全員分”

勤務医1人に30%を丸ごと使うことはできません。

だから「勤務医10〜15%」に落ち着く

月売上400万円

人件費枠:120万円

この中で、

  • 勤務医:40〜60万円

  • DH・DA・受付:60〜80万円

という配分になるのは、かなり自然です。

これが、

**「売上400万円を作るドクターの月給が40〜50万円になることが多い理由」**です。

それでも超過歩合が20〜25%なのはなぜ?

ここで、もう一つの疑問が出てきます。

「勤務医に使えるのは10〜15%なのに、なぜ歩合は20〜25%なの?」

答えはシンプルです。

役割が違うから。

  • 10〜15% → 会計上の安全ライン(医院全体)

  • 20% → ドクター個人を動かすためのインセンティブ率

歩合20%は、

「頑張った分の“分け前”を実感させるための数字」。

これを10%にすると、

ほぼ固定給と変わらず、誰も本気で売上を伸ばしません。

この設計が“壊れない”理由

まずは原資が暴れない。

つまり「医院がつぶれない」。

その上で、超過分を20%で返すことで、

ドクターのモチベーションも死なない。

この2つを同時に成立させるために、

多くの歯科医院では

**「固定給+超過歩合」**という形が採用されています。

「なぜ売上400万円のドクターの給料は40万円なのか?」 Q&A

売上400万円もあるのに、月給40万円はやっぱり安すぎませんか?

売上400万円はドクター1人の力ではなく、衛生士・助手・受付・技工・設備などを含めた「チーム売上」です。人件費30%は全員分なので、勤務医1人に使えるのは10〜15%程度になるのが一般的です。

一般企業では人件費30%なのに、なぜ歯科医院は同じ考え方ができないのですか?

歯科医院は技工料・材料費・設備投資など、人以外の固定費が非常に重い業種です。人件費以外に30〜40%かかるため、一般企業と同じ感覚で給与配分をすると経営が成り立ちません。

なぜ歩合は20〜25%と高く設定されているのですか?

20%は会計上の人件費率ではなく、ドクター個人を動かすための「インセンティブ率」です。10〜15%だと固定給と差が出ず、売上を伸ばす動機が弱くなるため、あえて高めに設定されています。

固定給40万円という数字は、どうやって決められているのですか?

多くの医院では、まず若手勤務医に最低限保証する固定給を決め、そこから逆算して必要な売上水準と人件費配分を設計します。その結果、40万円前後が現実的な落とし所になりやすいのです。

給料が低いと感じたら、すぐ転職を考えた方がいいのでしょうか?

必ずしもそうではありません。問題が評価ではなく「医院の構造」にある場合も多いからです。まずは自分の売上と給与の設計を理解し、その上で改善余地がないかを判断することが重要です。

 

まとめ

給料が低い = あなたの力が「評価されていない」とは限りません。

評価ではなく、

単に“医院の構造”の問題ということもあります。

もちろん、医院の形はさまざまです。

  • 新卒ドクターが多い医院

  • アシストが手厚い医院

  • ベテラン中心で少人数運営の医院

構造が違えば、正解も変わります。

ただ一つ言えるのは、

この構造を知らないまま不満だけを抱えるのは、かなり損だということ。

これを機に、

「自分の給料は、どんな設計の上に成り立っているのか」

一度、冷静に考えてみてください。

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