若いうちは“目の前の診療”で精一杯で、キャリアのことを深く考える機会は多くありません。しかし実際には、20代〜30代前半の選択が、5年後・10年後の給与・働き方・自由度をすべて決める といっても過言ではありません。
今回は、実際に多くの若手歯科医師が経験している
「こんなはずじゃなかった」
という後悔を5つにまとめ、未来のキャリア選択で同じ失敗を避けられるように解説します。
目次
後悔①:最初の職場を“給与だけ”で選んでしまった
若手歯科医師が最もやりがちな後悔がこれです。
「固定給が高いから」「歩合率が良さそうだから」「とりあえず給料が良いから」
と条件だけで選んでしまうパターン。
しかし現実は、 給与よりも“教育環境”の差が将来年収を大きく左右します。
▼ 給料で選んだ結果よくある後悔
給与の良さだけで職場を選ぶと、教育環境が不十分なことが多く、技術が身につかないまま時間だけが過ぎてしまいます。すると、難易度の高い症例を任せてもらえず経験の幅が広がらないため、3年後に転職しようとしても実績不足で条件が上がりません。結果として年収が早い段階で頭打ちになり、開業に必要な治療計画・症例管理・経営感覚といった基礎力も育たず、将来の選択肢が一気に狭くなってしまいます。
- 技術が身につかず、3年後に転職すら難しい
- 難易度の高い症例を任せてもらえない
- 年収の頭打ちが早く来る
- 開業の基礎力が育たない
後悔②:教育体制の弱い医院に入ってしまった
教育の質は、若手の成長スピードを決定づける要因です。
ところが、実際には
“教育が整っていない医院”のほうが多い のが現実。
-
マニュアルや指導体制がない
-
先輩の教え方がバラバラ
-
丁寧に確認する時間が取れない
-
院長や先輩も常に忙しく、質問したくてもできない雰囲気
このような環境では、症例の背景や治療方針を学ぶ機会がなく、技術が伸びず、結果的に売上も給与も上がりません。
✔ 経験者が口を揃えて言う後悔
選ぶべき基準は「教育が仕組みとして存在するか」
具体的には:
- 1年目〜3年目の成長ロードマップが用意されている
- カルテ指導・症例レビューなど「仕組み」が週単位で組まれている
- 院長・先輩が忙しい時でも相談できるサポート体制がある
- 「質問しやすい文化」が医院として根づいている
- 誰に聞いても同じルールでフィードバックがもらえる体制
ここでは、「どんな技術が身につくか」とは違い、
「どうやって身につくか・環境が継続的に支えてくれるか」が焦点になります。

後悔③:歩合制度の“計算方法”を理解しないまま契約した
歩合制度には
- 総売上ベース
- 診療売上ベース
- 開始ラインの有無
- 控除項目
- など医院ごとに差が大きく、若手が最も間違いやすい部分です。
▼ よくある後悔例
✔ 結果
歩合が「有り」なのに歩合がつかない = ほぼ固定給だけ
→ 年収の伸びが止まる
→ 転職時に待遇が上がらない
後悔④:なんとなく勤務し続け、キャリアの方向性を決めなかった
20代〜30代前半でよく起こるのが、
“気づいたらキャリアプランがないまま数年経っていた” という後悔。
- 本当は開業したい
- でも具体的な準備はしていない
- 技術の幅が広がらない
- 得意分野が育っていない
「3年ごとの節目」で方向性を決めないと起きる後悔
若い頃は、日々の診療に追われて気づきにくいのですが、
キャリアは“3年単位”で考えると失敗しにくくなります。
方向性を決めないまま何年も過ごすと、気づいた時には選択肢が狭くなり、次のような後悔が起きやすくなります。
若手が陥りやすい後悔の具体例
● 30歳後半になって突然「矯正を学びたい」と思い始める
しかし、矯正は基礎から学ぶのに時間がかかり、症例経験も必要。スタートが遅く「今からでは間に合うのか…」と焦るケースが非常に多いです。
● 開業したいのに、必要な症例経験が足りていない
抜歯・根管・補綴・義歯・インプラントなど、開業に必要な症例が偏っていて「今のままでは独立できない…」と気づくのが30代半ばということもあります。
● なんとなく勤務し続け、年収の伸びが止まってしまう
教育もキャリア設計もないまま続けると、症例の幅が広がらず、気づけば“売上も給与も頭打ち”になり、転職でも評価されにくくなります。
キャリアを迷わないための【3年ステップ】早見表
| 1〜3年目 | 基礎固め(一般治療を均等に学ぶ) |
|---|---|
| 4〜6年目 | 専門分野を広げる・得意領域を作る |
| 7〜9年目 | 開業かスペシャリストか方向性を確定させる |
この流れを意識すると、
後から「もっと早く動くべきだった…」という後悔を防げます。
後悔⑤:人間関係や医院の雰囲気を軽視した
若手が甘く見がちですが、人間関係と医院の文化は“成長のスピード”に直結します。
「医院の文化」とは?
「医院の文化」とは、その医院に当たり前のように存在する「空気感・価値観・行動のルール」のことです。これはマニュアルに書いてあるものではなく、スタッフ全員が“自然にそうしている”という習慣のようなものです。
例えば:
-
質問しやすい雰囲気か、相談しづらい空気か
-
失敗を責めるのか、次の改善に活かすのか
-
患者説明を丁寧にする文化か、時間優先で流す文化か
-
スタッフ同士が協力し合うか、各自がバラバラに動くか
-
学びを歓迎する雰囲気か、「自分で覚えて」の放任主義か
-
忙しいときに助け合うのか、他人の仕事に無関心なのか
これらは医院ごとに大きく異なり、若手の成長スピードに直接影響します。
なぜ文化が成長に影響するのか?
| 文化が良い医院では | 文化が良くない医院では |
→ 若手が短期間で大きく成長できる |
→ 若手が自信をなくし、成長が止まる |
「医院の文化=医院の“空気”」
この空気が自分に合っているかどうかで、3年後の成長度合いは想像以上に変わります。
- 相談しにくい雰囲気
- 失敗を共有できない
- 衛生士・助手との連携不足
- カルテや診療オペが属人的
このような職場では、技術よりもメンタルが消耗し、成長が遅くなります。
✔ 経験者の多くが後悔
キャリアの後悔トップ5 Q&A
給与が良くても教育が弱い医院だと技術が育たず、症例経験も偏りやすくなります。結果として3年後に転職が不利になり、年収も伸びません。長期的に見ると教育環境の差が大きな後悔につながります。
忙しくて質問できなかったり、指導が属人的だったりして学ぶ機会が乏しくなります。その結果、自信がつかず、診療スピードも上がらず、歩合も給与も伸びない負のループに陥りやすくなります。
歩合率が同じでも、総売上ベースか診療売上ベースかで金額が全く変わります。自費が少ない医院や開始ラインが高い医院では歩合がほぼ発生せず、固定給だけになってしまうこともあります。
得意分野が育たず、開業準備もできず、年収の伸びも止まります。“3年ステップ”で方針を決めないと、30代で「今から学べるか…?」と焦るケースが非常に多く、選択肢が狭くなります。
医院の“空気”が悪いと質問や学びが阻害され、失敗を共有できず成長が遅れます。逆に文化が良い医院では助け合いが自然に起き、若手が短期間で技術も自信も伸ばせます。成長スピードに直結します。
まとめ
最後に、経験者が最も勧める「若手が今すぐやるべきこと」をまとめます。
① 教育体制が明確な職場を選ぶ
カリキュラム・指導医の有無・症例の広さを要チェック。
② 歩合制度の計算方法を必ず確認
総売上ベースか?診療売上か?開始ラインは?
③ 自費率20%前後の医院がバランスが良い
完全自費でなくてもOK。保険メインより伸びやすい。
④ キャリアの方向性を3年ごとに決める
開業?勤務医?得意領域は?先送りしないこと。
⑤ 人間関係の“相性”も最重要
教育は人が作る。人間関係次第で成長速度も変わる。





