歯科医師コラム

非常勤で自由に働くには?  「選ばれる歯科医師」になるために今すべきこと

「もっと自由に働きたい」「副業や家庭と両立したい」「場所に縛られずに自分の力を発揮したい」 そんな想いを抱く歯科医師が近年、確実に増えています。

特に若い世代を中心に、「常勤でフルタイム」よりも「非常勤で複数の職場を掛け持ちする」「フリーランスのように働く」というスタイルが注目されています。けれど同時に、こうした働き方は“誰でもできる”わけではありません。自由と引き換えに、自分の実力や信頼が問われる働き方でもあります。

では、非常勤歯科医師として「選ばれる存在」になるには、どんな準備や意識が必要なのでしょうか?

なぜ「自由に働きたい」と考える歯科医師が増えているのか?

働き方の価値観が多様化

近年、特に若い世代の歯科医師を中心に、「安定=正社員・常勤」ではなく、「自分らしい働き方」「ライフスタイルに合った働き方」を重視する風潮が強くなっています。

コロナ禍を経て、全体として働き方を見直す人が増えたことも大きな要因の一つです。これにより、週何日・何時間働くか、どこで働くかを自分で選びたいというニーズが高まっています。

女性歯科医師の増加

ここ10年ほどで、歯科医師国家試験合格者の約半数を女性が占めるようになり、開業医や勤務医としても女性の存在感が高まっています。

結婚や出産・育児などのライフイベントを経ても、キャリアを継続したいと考える女性が増えており、常勤ではなく「非常勤」「短時間勤務」「スポット勤務」など、柔軟な働き方を選ぶケースが多くなっています。

副業・複業への関心の高まり

SNSやYouTube、オンラインコミュニティなどを活用する歯科医師が増え、自ら情報を発信したり、他分野での活動に挑戦したりする動きが広がっています。

その中で、「常勤で一つの医院に縛られる働き方」ではなく、「非常勤で複数の医院をかけ持ち」「空き時間でセミナー講師・執筆活動・経営支援を行う」といった“複業型”の働き方を目指す人も増えています。

常勤からの卒業  自分らしく働く“ネットワーク型歯科医師”という選択「そろそろ常勤から一歩踏み出したい」 「決まった場所に縛られずに働けたら…」 「フリーランス的に活躍する歯科医師って実際どうなの?」...

雇用の流動性が高い

昔と比べ、歯科医院の数も増加し、勤務医を募集する求人も多様になりました。

そのため「今の医院で我慢して働き続ける」よりも、「自分に合った環境を求めて動く」という選択がしやすくなっています。特に都市部では非常勤求人も豊富で、柔軟な働き方を実現しやすい土壌があります。

「非常勤医師同士の競争」が起こっている理由とその実態

非常勤勤務を選ぶ歯科医師が増加している

先ほどの背景とも重なりますが、自由な働き方を求めて「非常勤勤務」を選ぶ歯科医師が年々増えています。
とくに都市部では、1つの医院に常勤するのではなく、複数の医院で非常勤として働くスタイルが一般的になってきました。

しかし、非常勤勤務の求人には当然「枠」があります。例えば「火曜日の午後のみ」「週2回限定」など、限られたシフトに対して複数の応募者が集まるようになると、医院側が“より優秀な先生”を選ぶ状況が生まれます。

医院側も“選ぶ時代”に

昔は「とにかく人手がほしい」「誰でもいいから来てほしい」という医院も多く存在しましたが、現在では人材の質を重視する医院が増加しています。

たとえば以下のような点が比較対象になります:

  •  患者さんとのコミュニケーション力
  •  スピードと正確さのバランス
  •  自費治療への理解と提案力
  •  医院の方針への順応力・協調性
  •  口コミ・リピート率への貢献度

こうしたポイントで“差”がつきやすく、医院側も「長くお願いしたい非常勤医師」を厳選する傾向が強まっています。

待遇面や勤務希望時間に関する競争

仮に同じスキルの先生が2人いた場合でも、「時給にこだわらない」「多少の残業や雑務にも柔軟に対応する」といった先生のほうが選ばれやすくなります。

また、「週に◯日しか出られない」「夕方までは勤務できない」といった制約が多い場合、他の柔軟な勤務希望の先生に競り負けてしまうこともあります。

「代わりがいる」という現実

非常勤勤務では「代診=代わりが利く存在」と見られてしまうリスクもあります。
そのため、「この先生でなければ困る」「この先生にまたお願いしたい」と医院に思ってもらえるような「選ばれる非常勤医師」になる努力が欠かせません。

非常勤に求められるのは「即戦力」と「信頼感」

非常勤勤務は、医院側にとって「限られた時間でしっかり診てもらう」ことが期待されています。
つまり、「育てながら任せる」という常勤医とは違い、「来たその日から安心して任せられる力」が求められるのです。

具体的には、

  •  基本的な保存・補綴・抜歯などの処置をスムーズに行える
  •  診断力・判断力がある
  •  患者やスタッフとのコミュニケーションが丁寧
  •  時間通りに診療を終えられる

といった、「安心して任せられる即戦力」であることが第一条件になります。

「専門性」や「人柄」が選ばれる理由になる時代へ

非常勤医の需要が高まる一方で、今後は“非常勤医師同士の競争”も起こると予想されます。
その中で「この先生に来てほしい」と選ばれるためには、何かしらの強みや魅力が必要になります。

たとえば、

  •  小児や訪問診療が得意
  •  自費のカウンセリング経験が豊富
  •  コミュニケーションが柔らかく、リピーターが多い
  •  チームとの連携を大切にし、空気を和らげる雰囲気を持っている

スキルだけでなく、“人柄”や“相性”が評価されるのが、非常勤という働き方の面白さでもあります。

実力だけでなく「段取り力・柔軟性」も武器になる

どんなに治療がうまくても、医院のやり方やシステムに合わせられないと、信頼は得られません。非常勤の現場では、

  • 初めて使う器材にもすぐ対応する
  • カルテや流れをすばやく把握する
  • トラブルにも冷静に対処する

こうした段取り力と柔軟性が、院長やスタッフからの信頼につながります。

また、終業後の記録や申し送りが丁寧であれば、
「この先生にまた来てもらいたい」と感じてもらえる可能性はグッと高まります。

 「選ばれる側」から「選ぶ側」になるために

今後、“非常勤”や“自由な働き方”はもっと広がっていくでしょう。
ただし、それはあくまで選ばれる存在であることが前提です。

自分の価値を明確に伝えられれば、「この曜日だけ」「この時間だけ」といった希望も通りやすくなります。
さらには、複数の医院から声がかかり、自分の働きたい場所やスタイルを“選べる立場”になっていけます。

そのためにはまず、

  •  自分のスキルを磨く
  •  苦手分野を減らす
  •  「また会いたい」と思われる人間性を育てる

この3つを地道に積み重ねることが大切です。

非常勤歯科医師として活躍するための準備チェックリスト

👄【コミュニケーション・信頼感編】

項目

チェック

初対面の患者さんにも、短時間で安心感を与えられる

スタッフ(DA、DH)と円滑に連携し、感謝の言葉を伝えることができる

自分の考え・診断をわかりやすく説明できる

患者の主訴や希望をしっかりくみ取るヒアリング力がある

クレームや不満に対して冷静に対処できる

【時間管理・柔軟性編】

項目

チェック

予約時間内に診療をきちんと収めるペース配分ができる

突発的なトラブルにも落ち着いて対応できる

医院ごとの方針や流れに素早く馴染む柔軟さがある

新しいシステムや器具に対して前向きに覚えようとする姿勢がある

💼【自己管理・信頼性編】

項目

チェック

時間厳守・遅刻なし・身だしなみも清潔感を意識している

出勤前にカルテや症例を把握して準備ができる

診療後の記録や申し送りを丁寧に行っている

キャンセルや急な欠勤がない/事前連絡がしっかりできる

📣【+αスキル編(あれば重宝される)】

項目

チェック

小児/矯正/訪問/審美など、専門的なスキルがある

自費カウンセリングや患者への提案力がある

SNS運用や広報への理解がある(医院から依頼されるケースも)

他院での勤務経験が豊富で、応用力がある

勉強会・セミナーに積極的に参加している

チェックが多いほど、医院にとって「またお願いしたい」「頼れる即戦力」として信頼されやすくなります。
「勤務日数を増やしてほしい」「別の医院も紹介したい」と言われるような“選ばれる非常勤”になりましょう。

「選ばれる非常勤歯科医師」になるには Q&A

非常勤で自由に働くって、誰でもできるんですか?

可能ではありますが、「自由=信頼と実力がある人だけに許される働き方」です。即戦力・柔軟性・人間性がそろってこそ成り立ちます。

院長から「またお願いしたい」と思ってもらうには?

診療技術だけでなく、時間通りに終わらせる力や申し送りの丁寧さ、スタッフへの感謝など、信頼につながる行動が求められます。

専門スキルがないと非常勤では不利ですか?

専門性は強みになりますが、まずは基本処置を正確にこなせることが前提です。誠実な対応や段取りの良さも高く評価されます。

限られた勤務日数でも選ばれるにはどうしたらいい?

出勤日数が少なくても「安心して任せられる」と思ってもらえるよう、事前準備やチームとの連携を大切にする姿勢が鍵になります。

「選ばれる側」から「選ぶ側」になるには何が必要?

実力と信頼の積み重ねです。自分の価値が伝われば、勤務条件の交渉もしやすくなり、働き方の選択肢が広がっていきます。

まとめ

非常勤という働き方は、自由で魅力的に見えますが、その裏では「医院にとって価値ある存在」である必要があり、一定のスキルや信頼感が前提条件です。だからこそ、「若いうちに基礎力を徹底的に固める」ことが、将来の自由な働き方への“投資”になります。

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