歯科医師コラム

【歯科医師】若手の給料はどう決まる?歩合の仕組みを徹底解説

若手歯科医師の多くが「歩合って結局どう計算されるの?」と疑問を持ちつつ、よく分からないまま給与条件を決めてしまいがちです。しかし、実は歩合は「計算方法」によって手取りが大きく変わり、同じ歩合率でも月収が5〜10万円違うことも珍しくありません。

このコラムでは、一般的な給与体系から歩合の計算式の違い、若手が損しやすい落とし穴までを分かりやすく解説します。転職や職場選びで後悔しないために、最低限ここだけは押さえておきましょう。

なぜ若手歯科医師は“給料の仕組み”を知らずに損してしまうのか?

多くの若手の先生は【固定給+歩合】と聞くと、なんとなく「稼げそう」というイメージだけで決めがちです。

しかし、実際の歩合には

  • 計算方法が医院によってバラバラ
  • 差し引かれる経費や控除が異なることがある
  • 教育体制の有無で大きく収入が変わる

という【落とし穴】があります。

まずは、歯科業界で一般的な給与体系を整理しましょう。

歯科医師の給与体系は大きく4種類

① 完全固定給

月◯万円の固定・・・研修医明け〜2年目で多いパターン。

  • 毎月の収入が安定
  • 技術習得に集中できる
  • 歩合と比べると給与がやや低い
  • 症例をこなしても収入が変わらない

② 固定給+歩合(ボーナス的)

月給に加え、一定の売上を超えたら歩合がつく。

【example】
固定40万円+売上80万円超から歩合◯% など

  • 安定+頑張った分が返ってくる
  • 若手でも比較的選びやすい
  • 歩合発生の“基準”が高い医院だと、実質歩合がつかないことも

③ 固定給 or 歩合給 【どちらか高い方】(ハイブリッド型)

最近増えている給与体系で、

毎月「固定給」と「歩合給」のどちらか高い方が支給される方式 です。

【example】
固定給:40万円   歩合:総売上の25%

● 売上が120万円なら、120万円×25%=30万円 (歩合計算の場合)

  固定給40万円>歩合給30万円   →    支給額は40万円(固定)

● 売上が180万円なら、180万円×25%=45万円 (歩合計算の場合)

  固定給40万円<歩合給45万円   →    支給額は45万円(歩合)

若手歯科医師にとって最もリスクが少なく、安定と成果の両方を得られる「ちょうど良いバランス」の給与体系といえます。

  • 最低保証(固定給)があるので安心

  • 売上が伸びれば歩合に自動で切り替わり、収入UP

  • 若手が挑戦しやすい公平な仕組み

  • 医院によっては歩合の計算基準が複雑

  • 固定給が高すぎると歩合に“切り替わりにくい”ことも

④ 完全歩合(フリーランス型)

完全な歩合給のみとなります。 基本的には経験のある歯科医師の場合には向いていますが、若手には不向きな給与体系です。しかしながら、固定給がある場合や、最低保証がある場合より歩合率が高い場合があります。

【example】

自費の場合:20〜30%    保険の場合:18〜22%

  • 実力があれば高収入
  • 時間の自由度が高い
  • レセプト枚数・症例数に結果が左右される
  • 社会保険なしの場合も多い(要確認)

歩合の計算は「総売上」か「診療売上」かで大きく変わる

歩合率そのものよりも大事なのが、何を基準に歩合を計算するか です。

① 総売上(担当患者の合計)ベースの歩合

Drが担当している患者さんから発生したすべての売上を合算する方式 のこと。

つまり:

という考え方です。

 

【POINT】なぜDHの売上もDrに入るのか?

理由はシンプルで、「その患者を担当している責任者はDrだから」です。診断、治療計画、治療方針の決定はすべて歯科医師が行うため、患者単位で売上を計算する医院では DH行為もDr売上に含める方が公平 とされています。

この「総売上(担当患者の合計)ベースの歩合」が一番シンプルでわかりやすい方式であり、最もフェアとも言えます。

② 診療売上(Drが直接行った行為のみ)ベースの歩合

こちらは逆で、Drが自分の手で行った処置のみ→ 点数計上する方式

なので、DH行為は一切カウントされません。技工料・衛生士が行うメンテの売上は対象外
Drが削った・詰めた・セットした行為のみで計算されます。

総売上ベース 診療売上ベース
・DH分も含まれる

・Drへの評価が高くなりやすい

・若手でも売上が伸ばしやすい

・Drが行った処置のみ
・歩合の“見かけの率”より手取りが下がりやすい

「診療売り上げベース」これ、実は歩合率だけ見ると高く見えるけど、総額は低くなる
というケースが多いのです。

【POINT】診療売上ベースの落とし穴

担当患者の売上:100万円(Dr行為だけ:60万円) 歩合25%

→ 総売上ベースの場合 100万円×25% = 25万円 
→ 診療売上ベースの場合 60万円×25% = 15万円
(差額10万円)

歩合率の数字に騙されやすいので注意!

 

「歩合がつかない若手」がやりがちな3つの勘違い

 ① 歩合の開始ラインが高すぎる医院を選ぶ

医院によっては、「月の売上◯◯万円を超えたら歩合が発生します」 という“歩合開始ライン”が設定されています。

しかし、このラインが 150万円や180万円など高く設定されている医院 では、若手の先生が歩合に到達すること自体が難しい という問題が起きます。

 

若手(1〜3年目)の先生の平均月売上は、一般的に 50〜120万円 程度。これは、診療スピード・担当患者数・自費の割合・アシスト体制などがまだ整わないため、自然とこのくらいに収まります。そのため、

歩合開始ライン:150万円

若手の現実的な売上:80〜120万円

という医院を選んでしまうと、歩合が“一度もつかない” 可能性が高い ということです。

 つまり、表向きは「歩合あり」でも…実際には“固定給のみ”の給与体系 になってしまうケースがあります。「歩合率25%」と書いてあっても、歩合に届かなければ意味がありません。

若手が見るべきPOINT!

  • 歩合開始ラインは 100万円以下 が理想

  • 医院として“若手が売上を上げやすい環境”があるか

    (アシスト、チェア数、教育スケジュールなど)

 ② 自費がほぼ入らない医院で歩合を選ぶ

歩合で収入を上げたい場合、自費治療がどれくらい入る医院か は非常に重要です。

保険診療だけでは、どうしても売上の伸びに限界があります。

特に若手の場合は、診療スピード・担当患者数・枠の取り方、などがまだ最適化されていないため、保険だけで高い売上を作るのは現実的ではありません。

なぜ自費が必要なのか?

保険診療の構造上、1人の患者さんで大きな売上をつくることが難しい ため、

・ 100万円売上げるには100名近い患者数が必要

・ 1日の診療枠が限られているので上限が決まってしまう

という状況になります。

一方、自費治療が少しでも入る医院では、売上に“加速装置”がついている状態。

セラミック・インプラント・矯正、などが少し入るだけで、歩合到達ラインに届きやすくなります。

自費がほぼ0%の医院で歩合を選ぶと、若手はほぼ確実に歩合がつきません。歩合制度が魅力的に見えても、自費率の低い医院は実質「固定給のみ」になりがちです。

 ③ 教育体制が弱く、治療スピードが上がらない

歩合は「売上=診療スピード × 患者数 × 単価」で決まります。そのため、若手のうちは

教育の質が売上=給与に直結します。

教育が弱い医院で起きる問題

  • 1本処置するのに時間がかかる

  • アポイント枠が埋まらない

  • 無駄なチェアタイムが増える

  • 患者説明に自信がない

  • 治療が先延ばしになり、売上に結びつかない

結果として、

1日の診療ボリュームが増えず、歩合にまったく届かない という状態になります。

若手の売上は、技術力より“仕組み”に左右されるため、

  • 明確な教育カリキュラム

  • 先輩Drのフィードバック

  • 丁寧なアシスト

  • 効率の良い診療オペ

  • ブラッシュアップの時間

これらが揃っている医院は、自然と処置スピードも上がり、歩合ラインに到達しやすくなります。

若手が「得する医院」の歩合条件は?

■ 若手が狙うべき条件

  • 総売上ベースの歩合
  • 歩合開始ラインが低い(〜80〜100万円くらい)
  • 教育スケジュールが明確
  • 自費率は高すぎなくてOK(20%前後で十分)

実際の月収シミュレーション(若手版)

■ パターンA:固定+歩合(総売上ベース

固定給:40万円   歩合:総売上100万円超から25%

先生の売上
=130万円
→ (130万-100万)歩合部分:30万円 × 25% = 7.5万円

月収:47.5万円

■ パターンB:固定+歩合(診療売上ベース

固定給:40万円   歩合:総売上100万円超から25%

総売上130万円(Dr行為は80万円 )
歩合は100万円超からなので、先生自身の売り上げは80万円だったため歩合は発生しません

月収:45万円

→ 見かけの歩合率は同じでも、計算ベースで差が出る。

歩合の仕組みQ&A

歩合は“率”が同じでも手取りが変わるのはなぜ?

歩合は「総売上ベース」か「診療売上ベース」かで計算される対象が違います。同じ25%でも、対象額が異なるため手取りが5〜10万円変わることがあります。

固定給+歩合なのに歩合がつかないのはなぜ?

多くの医院では「歩合開始ライン」が設定されており、若手の売上ではそのラインに届かないケースが多いからです。表向きは歩合ありでも実質固定給のみになります。

総売上ベースの歩合は何が特徴ですか?

患者単位での売上をすべて合計する方式で、DHのメンテなども含まれます。若手でも売上が伸ばしやすく、公平性が高いのが特徴です。

診療売上ベースはなぜ不利になりやすい?

Dr自身が行った処置のみが歩合対象となるため、衛生士の処置や技工料が除外されます。結果として総売上より大幅に低い額が基準となり、歩合がつきにくくなります。

ハイブリッド型(固定か歩合のどちらか高い方)のメリットは?

最低保証があるので安心しつつ、売上が伸びれば歩合に自動切替され収入が増えます。若手が安心して挑戦できる仕組みと言えます。

まとめ

若手の先生が給与で失敗しないためのポイントはたった1つ。

歩合“率”より、歩合“計算式”を必ず確認すること(総売上なのか、診療売上なのか、開始ラインはいくらか)給与の仕組みを理解しておけば、転職でも開業でもキャリアの選択肢が大きく広がります。

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