歯科医師採用 コラム

「常勤」を採用したい歯科医院 VS.「非常勤」で働きたい歯科医師

歯科医師の働き方に関して、「常勤を採用したい歯科医院」と「非常勤で働きたい歯科医師」というズレが生じているのをご存知ですか?

非常勤で働きたい歯科医師はどのように考えているのでしょうか?

正規社員・非正規社員のメリット・デメリット(一般職)

「正規社員」のメリット・デメリット

・ 収入と雇用が安定している。

・ 社会的な信用度が高く、ローンなどの審査も通りやすくなる。

・ 福利厚生も十分活用できる

・ 研修や業務の幅の広さから成長の機会が多い。

・ 多くの場合フルタイムで働くため、拘束時間が長く業務量が多い。

・ 質的に責任の重さがある。

・ 会社の都合で異動や職種変更がある。

・ 望んでいない仕事もやらなければならない。

 

「非正規社員」のメリット・デメリット

・ 1つの職場や仕事に縛られない働き方ができる。

・ 仕事とプライベートのバランスをとりながら複数の職場での労働が可能。

・ 自分の専門性を生かしやすい働き方。

・ 雇用が不安定。

・ 正規社員に比べ賃金が安く、仕事が見つからない時期があると、生活自体が     

  安定しにくく、将来の人生設計が難しい。

 

働くスタイルが変わりつつある

昭和の日本では男性が働いて、女性は専業主婦というのがスタンダードでした。学校を卒業したら、男性は常勤で働くのが当然で、定職に就かないと後ろめたいような時代でした。

しかし、時代が「昭和 ➡ 平成 ➡ 令和」と移り、働き方にも大きな違いが出てきました。

2015年には「女性活躍推進法」が施行され、女性の個性と能力が十分に発揮されることを国が推奨しています。

2017年には「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業の普及促進が図られるようになりました。多様なキャリア形成を図っていくことを促進するためにガイドラインが数回にわたって改訂されています。

2021年には、新型コロナウイルスの影響で、あらためて「在宅勤務」が注目されました。

2023年には、育児休業取得率の公表義務化に伴い、労働者1000人を超える事業主に対して、男性従業員の育児休業等の取得率の公表が義務付けられます。今後は女性だけではなく、男性も育児休暇を取得する時代になります。

歯科業界の働き方

歯科業界でも、女性の歯科医師がどんどん増えていることはご存知の通りですが、社会の流れに合わせて男性・女性共に働き方がどんどん変化してきています。

その一つとして、「非常勤」という働き方のスタイルです。

これまでであれば、「非常勤=主婦・子育て中の女性ドクターの働き方」というのが定説でしたが、最近では、未婚の女性ドクターや若い男性ドクターにもこの働き方が広がっています。

週2~3日、歯科医師として働いて、残りの日は自分の趣味に費やすという人もおられますが、週2~3日の非常勤勤務を2カ所掛け持ちするという人も増えているのが現状です。

 

なぜ「常勤」ではなく「非常勤」を選ぶのか

歯科医院を2カ所掛け持ちして週5日働くのであれば、常勤で1医院で週5日働くのも同じではないのかと思われるでしょうが、そこには大きな違いがあるようです。

休みの調整ができる

1医院で「常勤」として働く場合、基本的には医院の休診日がお休みとなります。最近ではシフト制を取られている医院も多いようですが、それでも周りのドクターと調整したり、土曜日は絶対出勤といった縛りもあるようです。それを考えると、非常勤であれば自分の好きな曜日に勤務できるという自由があります。

勤務時間の調整が出来る

歯科医院はどうしても19時や20時までの勤務になってしまうのが現状です。常勤であれば17時~18時までといった希望は通りませんが、非常勤であればそれを前提に医院を探せば可能となります。また非常勤であれば、時間から時間だけなので、残業をする必要もありません。

治療以外の業務がない

非常勤であれば「治療以外の業務がない」というのも大きなポイントのようです。常勤であれば、夜や休日の勉強会や会議(ミーティング)に参加する必要も出てきます。他にも以下のような話を聞いたことがあります。

・ 勉強会に参加する。

・ スタッフの勉強会のためにドクターが資料を作成し、進行をする。

・ 転職フェアーなどに勤務医として招集される。

・ スポーツや食事会など医院のイベント事に参加する。

・ 理事長の論文発表の手伝いをする。

・ スタッフやドクター同士の人間関係

このように常勤ドクターには治療以外にも求められることが多いようです。非常勤であれば、時間から時間まで治療だけに専念することが出来ますし、医院側も非常勤には「治療」しか求めていないため、上記の事を依頼することは無いという大きな違いがあります。

お給料が高い

一般的に非正規社員は賃金が安いと言われていますが、歯科医師の世界ではそうとは限りません。逆に、非常勤であれば、社会保険に加入する必要が無いこともあって、その分をお給料に上乗せしてもらえる分、時給単価にすれば常勤よりも非常勤の方が高い場合が多いです。ただボーナスなどを合わせた年収ベースでいけば非常勤の方が安いかもしれませんが、メリット・デメリットを考慮すれば、許容範囲内なのでしょう。

そもそも非常勤だと社会保険加入や福利厚生の面での不利がありましたが、平成28年から健康保険・厚生年金保険の加入要件が、「週20時間以上であること」となっているため、1日8時間労働であれば週2.5日勤務していれば加入要件を満たすことになります。そのため、週3日と2日で勤務を分ければ、週3日勤務の方で加入してもらえばOKという事になり、常勤である必要性も無くなります。

また有給休暇も、「1週間の所定労働時間が30時間未満で、1週間の所定労働日数が4日以下」であっても、日数は少なくなりますが、取得が可能です。

例えば、常勤で6ヵ月勤務すれば有給休暇が10日付与となりますが、非常勤でも週3日勤務で6ヵ月勤務すれば5日付与されますし、週2日勤務でも3日付与されます。合計8日ということで、正社員の10日に対して大差ないことがわかります。

医院の都合で、職場異動がある

遠方への転居などは歯科医院の場合少ないですが、分院の方へ異動を命じられたり、本院勤務と言われながら、週数日は分院の方にヘルプで行く必要があるといったことも常勤の場合はあるようです。また訪問診療を常勤勤務医でヘルプする場合もあります。非常勤であればこういった事はほとんどないといえます。

開業までに色々な経験が出来る

これは歯科医師独特の理由と言えるかもしれませんが、多くの方が、開業という目標を持たれています。歯科医師免許取得から開業までの年数というのは決して長いとは言えません。そのために1カ所の医院にとどまらず、数カ所の医院で色々な事を学びたいという考え方をされる方も少なからずおられます。

働く場所はどこにでもある

一般的に非正規社員は、「雇用が不安定で、仕事が見つからない時期がある」というデメリットがありますが、これも歯科医師にはほとんど当てはまりません。コロナの時に、訪問診療の受け入れが止まってしまった際に、非常勤の訪問診療専門ドクターが自宅待機になったという話は聞きましたが、歯科医師という職業柄、それが大きなダメージになるというわけでもありませんし、基本的には働く場所はどこにでもあるので、非常勤のデメリットとは言えません。

プライベート重視

「非常勤」という働き方を選ぶのには、男性も女性も「プライベート重視」が根底にあるようです。身体を壊してまで、会社(医院)のためにという考え方もありませんし、「家事・育児は父親・母親が協力し合うもの」という考え方も根付いてきました。また、歯科医師を選んだ以上、歯科医師の道一本という考え方はなく、多様性の時代になっています。色々な事を挙げて優先順位をつけたら、最終的には「非常勤」という働き方に至ったという事かもしれません。

常勤を採用したい歯科医院

しかし、たいていの歯科医院は常勤での採用を希望されます。

・ 患者さんに対して責任をもって治療してほしい。

・ 患者さんの予後の経過を診ることは歯科医師として重要。

・ 医院の理念を受け継いだ後継者を育てたい。

最近の「働き方改革」で、歯科医師の働き方も変化しつつあるようですが、やはり医療従事者である以上、患者さんに責任を持つという事は重要です。そして、近い将来開業を考えているドクターであれば、患者さんの予後経過はもちろん、医院経営・スタッフ対応を学べるのは常勤という勤務形態だからこそと言えるでしょう。また開業予定はなく、将来的はどこかの分院長でと考えている方であれば、やはり医院の理念を受け継いだ後継者に医院を任せたいと思うのは当然だと思います。

「常勤vs.非常勤」Q&A

歯科医師において「常勤」と「非常勤」の働き方には何が違うのですか?

「常勤」は一つの医院でフルタイム勤務を行い、定期的な休みは医院の休診日に従う形が主となります。「非常勤」では勤務医院を選び、勤務日や時間を自分で調整することが可能で、複数の医院で働くこともあります。

非常勤で働く歯科医師の主なメリットは何ですか?

非常勤で働く歯科医師の主なメリットは、勤務時間と勤務日の自由度が高いことです。これにより、仕事とプライベートのバランスを保ちやすく、複数の医院で働くことで経験やスキルを広げることが可能となります。

なぜ歯科医師は「非常勤」を選ぶのですか?

「非常勤」を選ぶ理由は、働く日や時間を自由に調整でき、複数の医院で働くことが可能だからです。これにより、自身のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能になるためです。

非常勤の歯科医師の給料は一般的に高いですか?

非常勤の歯科医師は時給単価が高く設定されることが多く、社会保険に加入しないために給与に上乗せされることもあります。年収ベースでは常勤と比較すると差があるかもしれませんが、メリット・デメリットを考慮すると許容範囲内と言えます。

常勤の歯科医師と比べて、非常勤の歯科医師は職場異動の可能性が少ないですか?

常勤の歯科医師には分院への異動や訪問診療のヘルプなどの要求がある場合がありますが、非常勤の場合はそういった異動やヘルプの必要性は少ないです。

まとめ

「常勤を採用したい歯科医院」と「非常勤で働きたい歯科医師」 この考え方の違いはどんどん広がっているように思われます。それがドクターの採用に繋がらない大きな要因かもしれません。

確かに、「常勤で働くこと」と「非常勤で働くこと」の差が少なくなっているわりに、常勤の重荷が嵩んでいることは否めないと思います。

世の中の流れに乗って「非常勤」をうまく活用して、潤滑に医院経営することを考える必要もあるでしょうし、実感できる程度に常勤と非常勤の差をつけるのも手かもしれません。