
「条件は悪くない。でも、なぜかうまくいかない」そんな違和感を抱えながら働いている若手歯科医師は、少なくありません。
待遇、症例数、教育体制──
どれも一見申し分なく見えても、職場の人間関係や雰囲気との“相性”が合わないことで、モチベーションや成長にブレーキがかかることがあります。
今回のコラムでは、職場選びにおいて見落とされがちな「人との相性」に注目し、実際にどのような場面で違和感が生まれやすいのか、どう判断し、どう選ぶべきかを整理します。
「働きやすさ」や「成長しやすさ」は、条件や技術だけでは測れません。あなたが本当に力を発揮できる環境とは何か──その視点で、少し立ち止まって考えてみませんか?
目次
なぜ「相性」が重要なのか
転職や就職の場面では、どうしても「給料」「症例数」「立地」といった条件面ばかりに目が向きがちです。
もちろん、それらも大事な要素ですが、実際に長く働けるかどうかを左右するのは、“人間関係”や“職場の雰囲気”だったりします。
特に、日々の診療を一緒に行う「院長や先輩ドクターとの“相性”」は、自分の成長スピードや職場への定着率に大きな影響を与えます。
「雰囲気は少し合わないけど、条件がいいから…」と選んだ職場で、早期退職につながってしまうケースも少なくありません。
誰と一緒に働くか──
それは、どんな治療を学ぶか、どんな歯科医師として成長していくかを決める、大きな要素です。
相性の合わない職場で起きやすいこと
「なんとなく話しかけづらい」
「質問すると嫌な顔をされる気がする」
「教えてもらえているけど、ずっと緊張していてつらい」──
こうした雰囲気の中では、せっかくの学びのチャンスがあっても、自分から吸収するのが難しくなります。
治療方針について意見を言いにくかったり、ミスを素直に報告できなかったりすると、知らず知らずのうちにストレスがたまっていきます。
自分のやり方を押しつける院長や先輩のもとで働くと、「正直、何が正解かわからない…」と悩むこともあるでしょう。
そういった環境では、自信を持って診療することが難しくなり、「自分は向いていないのでは」と感じてしまう人もいます。

合う・合わないはどう判断すべきか
では、どうやって「相性」を見極めればいいのでしょうか。
結論から言えば、「見学」「面接」の場面でのちょっとした雰囲気の違和感を、見過ごさないことです。
たとえば──
- 院長はスタッフや患者さんにどんな口調で話しているか?
- スタッフの表情に張りつめた感じはないか?
- 面接でこちらの話を丁寧に聞いてくれたか?
治療技術の高さや設備の充実度といった「外から見える部分」だけでは、相性までは測れません。
だからこそ、「人」をよく観察することが大切です。
また、「この先生はすごいけど、正直ちょっと怖いな」と感じたなら、それは悪い意味での「圧」かもしれません。
尊敬できる存在であると同時に、「相談できそう」「一緒に働きたい」と思えるかどうかが、ひとつの判断軸になります。
自分に合う環境を見つけるために
相性を考える前に、まずは「自分がどんな働き方をしたいのか」をはっきりさせることが重要です。
たとえば──
- 経験を積んで技術を磨きたい → 指導力のある院長・教育体制がある環境
- 余裕のある働き方をしたい → 人間関係が穏やか・定着率が高い職場
- 将来は開業したい → 経営に触れさせてくれるような院長のもと
また、人によっては「上下関係がしっかりある方が安心できる」という方もいれば、「フラットな距離感の方が話しやすい」と感じる方もいます。
このあたりは、「性格」との相性にも深く関わってきます。
「自分はこういう環境で力を発揮できる」という軸があると、職場選びの精度は格段に上がります。

相性の良い職場で得られるもの
相性の良い院長や先輩のもとで働けると、「質問しやすい」「ミスを正直に言える」「やる気が自然と湧く」──そんな好循環が生まれます。日々の診療でわからないことを気軽に聞けたり、自分の成長を喜んでもらえたりすると、診療そのものにも前向きに取り組めるようになります。
また、「この人と一緒に働けてよかった」と思える経験は、歯科医師としての原体験となり、その後の職場選びや自分が人を教える立場になったときの基準にもなっていきます。良い人間関係は、目に見える“待遇”以上に、自分の心とキャリアを支えてくれる大切な土台になります。
「院長や先輩との相性」ってどう考える?Q&A
はい。「人間関係の相性」は立派な判断基準です。毎日の診療がストレスになると、どれだけ条件が良くても長続きしません。
完璧には難しくても、話し方やスタッフとの距離感、雰囲気は十分ヒントになります。「違和感」があれば、慎重に。
我慢のしすぎは逆効果です。聞けない雰囲気では学びも浅くなります。「相談しやすさ」も大切な成長の土壌です。
まずは「自分がどう働きたいか」を明確にしましょう。その軸があると、見学時にも“自分にとっての違和感”に気づきやすくなります。
素直に質問できて、自然と前向きに働けるようになります。良い人間関係は、自分の成長スピードと継続力を大きく引き上げます。
まとめ
「この人と働けるか」は、キャリアを左右する
歯科医師としてどんな職場で働くか──それは単に「場所」や「条件」を選ぶ話ではなく、
「誰と働くか」「どんな人と成長していくか」を選ぶ行為でもあります。
治療方針や技術、教育体制ももちろん大事ですが、最終的には「この人となら安心して診療できる」と思えるかどうかが、働きやすさと継続性を決めていきます。
条件だけでなく、“相性”という視点を忘れずに。
それは、あなたのキャリアをより豊かにする選び方のひとつです。

