歯科医師コラム

歯科医師  歯科医院の継承ってどうなのかな?

歯科医師になったものの将来どのような道を行こうか悩まれている方は多いかと思います。

開業? 勤務医?

大きく分けると、「開業」して自分の医院を持つか、「勤務医」として雇用された状態で継続するかという2つに分かれます。

もう少し細分化すると、

「開業」

1. 自身で新しい医院を作る

2. 医院を継承する。

「勤務医」

1. 一勤務医として働く。

2. 雇用されている立場ではあるが、「院長」「分院長」というポストで働く。

以上のように分かれるのかなと思います。

ここでは、「継承」という事に目を向けてみたいと思います。

歯科情勢

2018年の12月27日に厚生労働省より公表された医療施設調査では、全国の歯科医院数は、68,609件。 開設数が1,720件、廃止数が1,739件となっており、開設数と廃止数の逆転現象が起きているとのことでした。

最近、歯科医院を訪問した際、「院長が高齢のため将来的に継承して頂ける方を探している」という相談を良く受けます。本来であれば院長の息子さんが継承されるのでしょうが、息子さんは別のところですでに開業されているという場合も少なくありません。

綺麗な外観・お洒落な内装といった新しい歯科医院がどんどん「開設」されていますので、時代の変化と共に古くなった歯科医院は「廃止」という道をたどることも多くなっているのかもしれません。

しかしながら、歯科医院の開業には最低でも約5000万円が必要と一般的に言われています。もちろん地域や規模、設備などにもよって大きく変わるでしょうが、大変なリスクを背負わなくてはなりませんので、二の足を踏む方は多いはずです。

「継承」という手もある!

莫大な金額の借金を背負う事に二の足を踏む方は、「雇われ院長」という手もあるのですが、ここでは「継承(承継)」という方法について考えてみたいと思います。

「継承(承継)」というスタイルでも具体的には2種類あるようです。

1. 院長のもとで数年働いて、院長の治療スタイルなどを受け継いだ上で、数年後に「継承(承継)」する。

2. 売却医院を「継承(承継)」という形で購入する。

院長のもとで数年働いてから、医院継承をするというのは、正直かなりハードルが高いかもしれません。たまたま働いた歯科医院の居心地がよく長く勤務することになりひいては「継承(承継)」してもらったというのは理想ですが、最初から数年後に「継承(承継)」をしてもらえたらという形で勤務を始めるのは私個人の意見としては難しい気がしています。

新卒の若い先生は、将来自分自身がどのような道に進む予定か決まっていない人が多いです。「開業はしない、継承案件などがあれば・・・」と考えだす人というのは、それなりに経験を積んだ人になってきます。

経験を積んだ先生が、高齢の院長先生と二人で診療をするというのは、ある意味難しいかもしれません。その上、院長に気に入られ、この人なら「継承(承継)」したいというお墨付きをもらうまでの数年の勤務というのは如何なものでしょうか・・・

それであれば、売却物件を「買収」する方が良いかもしれないです。

「承継」と「継承」の違い

ここで「承継」と「継承」の違いについて、調べてみました。私は「継承」といつも言ってしまうのですが、本当はどちらが正しいのかなと調べてみました。

承継・・・先代の人から「地位・精神・身分・仕事・事業などを受け継ぐ」

継承・・・先代の人から「義務・財産・権利などを受け継ぐ」

という違いがあるようです。

という事は、前出で言えば、(1)の院長と数年一緒に働いてから引き継ぐという方法は「精神や仕事」という意味も受け継ぐという事なので、「承継」の方となり、(2)の単に「財産や権利」だけを受け継ぐ方は「継承」というのかもしれません。

「買収」とは?

M&Aにおける「買収」とは、対象会社の経営権を獲得する目的で株式の過半数や事業部門の資産を買い取ることをいいます。新規事業を立ち上げたり強化していく場合と比較して、買収は短期間での事業拡大を期待することができます。

大きな会社組織でいうのであれば、以上のような内容になりますが、歯科業界で言うのであれば、要するにチェアーや機材、ひいては患者さんをそのまま引き継ぐという事になります。

もちろん、費用は発生致しますが、新しくチェアーや機材を揃えることを考えたら、昨日まで診療していたものをほぼそのまま受け継ぐのですから、費用を抑えた状態ですぐに診療が出来る状態であるということです。

「買収」のメリット

・ すぐに診療が出来る

・ 患者集めから始める必要がない

・ スタッフを引き継げる場合も多く、改めてスタッフ募集をする必要がない。

以上が「買収」のメリットといえるかもしれません。場合にもよりますので、スタッフが引き継げるなどは確実の話ではありませんが。

「買収」のデメリット

・ チェアーや機材が古い場合もある。

・ 医院に対して悪い噂などがある場合もある。

デメリットとしてあげるのであれば、この二つでしょうか。では、具体的にお話致します。

「チェアーや機材が古い」

もちろん、これは一概には言えません。私もこれまで色々な継承案件を経験しましたが、一番多いのは、「高齢に伴う院長の引退」により売却を希望されている場合です。となると、歯科医院の雰囲気は少しレトロであると言えます。見るからに最近できたイメージとは違い、昭和の歯医者感があふれるものといえるでしょう。

待ち合い室は一昔前にそうであったように、靴を履き替える形になっており、小さな受付があり、診療スペースは一部屋にチェアーが並んでいるというイメージです。

そうなると、チェアーは10年以上前のものであったり、機材も古いという事になります。部屋のレイアウトも古かったり、壁紙がはがれていたりという事もあります。ただ、昨日まで院長はこれで診療していたのだから診療ができないわけではありません。

内装に関しては、少し手を加えればイメージは変わるかもしれませんし、機材も本当に古いものは新しいものに変えて使えるものは使うという手もあります。

すべて新しいものを買い揃えることを考えたら費用も抑えられるでしょう。ただ処分にも最近は高額な費用がかかることは頭に置いておく方が良いかと思います。

すべてを廃棄する費用を考えたら、安くても、ただ同然でもいいから誰かに売却した方が得かもと考えている人もいるかもしれません。そのあたりはしっかり見極める必要があると思います。

「患者を引き継げる」

新しく医院を始めて患者さんが来るかというのが多くの人の不安です。最近では内覧会などをして新患を集めるという方法もありますが、これも費用がかかってしまいます。そういう意味では、ある程度、患者をそのまま引き継げるというのはメリットといえます。

ただこれもどういう状況での継承かにもよります。院長と共に患者さんも高齢化している場合もありますし、地域的に高齢化してしまっているという事も多いです。また閉院することなく継承するのであれば良いのですが、一旦閉院して期間があいてしまっている場合、患者さんはその間には慣れてしまっている場合も多いです。

もし高齢化している場合でも、往診に力を入れてやろうということであれば、外来診療のクリニックにはそれほど力を入れる必要もありませんし、周りに高齢者がたくさんいるというのはメリットにもなります。

もちろん、継承を考える際には、過去3年の書類を見るべきですし、1年くらい遡って来患数や新患数を確認する必要があります。

「負」の継承

これは一番肝心なところであり、知り得ることが難しい部分です。「患者が引き継げる」というメリットと裏腹に前院長のクレームなどを受ける可能性も出てきます。問題を抱えた患者さんからすれば院長が変わったとはいえ、お構いなしに文句を言ってくる人もいます。クレームによって精神的ダメージも受けますし、治療費を取れない場合もあるという最悪な事態になることもあります。

しかしながら、どれだけ書類を提出してもらってもこの部分は見えない場合が多いため、継承の一番大きなネックといえるかもしれません。

「スタッフを引き継げる」

スタッフというのは、もちろん「この院長の下で働きたい!」という人もいますが、家から近いからこの歯科医院で働きたいという人も多いため、院長が変わってもスタッフが残る場合もあります。

スタッフを募集するのには募集の費用も掛かりますし、採用できるまで結構困難な場合もあります。

特に衛生士に関してはなかなか採用が難しいため院長が変わっても残ってくれるというのであれば、大きなメリットといえるでしょう。ただ、前院長の下で働いていたわけですし、患者さんとの関係もわかっているため、メリットと同じくデメリットになる場合もあるかもしれません。

「売却」にも色々な理由がある

チェアーや機材が古い場合もあるとお話をしましたが、一概にすべてがそうとは限りません。これまで私が対応してきた案件でも以下のような理由で「売却」を希望された場合もありました。

1. 別の場所で歯科医院を新たに開業したいため手放したい。

2. ドクター不足のため分院を手放したい。

3. 院長の体調不良(死亡)のため手放したい

これらの内容の場合は、決してチェアーや機材が古いわけではありませんでした。特に(1)の別の場所で歯科医院を開業したいため売却希望された案件などは、開業して数年の新しい歯科医院でしたので、チェアも機材も新しく、棚なども特注で作られたクリニックでした。もちろん費用も比較的高かったのですが・・・

(2)ドクター不足のため分院を手放したいという案件も、全く問題のない立派な歯科医院でした。ドクターを採用するのも今の時代一苦労なので、そのことに労力を使う事に疲れたため自分自身が一人で出来る一医院で良いと思われての売却でした。

(3)院長の体調不良(死亡)のため手放したいという案件も少なくはないです。奥様やご子息が歯科医師でなければやりたくてもできないため仕方なく手放すという場合も多いです。また盛況中の医院だったという事も多く、スタッフもそのまま残ってくれる場合が多いです。

「売却」理由には色々あります。もちろん表面上はこうだけど、実は何か問題点があったという場合もありますので、よく調べることをお勧めします。

家賃について

補足となりますが、家賃についても注意が必要です。

家賃 〇〇万円と聞いていたのに、引き継いだとたんに家賃が上がったという事が以前ありました。

家主さんから家賃の値上げを言われていたものの、何とか押さえていたのですが、新しい取引になるのであればこれを機に家賃の値上げをしたいという場合もありますので、ある程度の段階で家主さんともお会いして確認しておく必要があります。

また医院の入っているビルの築年数なども確認しておく必要があるでしょう。

 

まとめ

一から開業するのは大変なリスクがあります。「継承」という方法もありますので、悪いイメージを勝手に持つのではなく、前向きに良い案件を探してみるのも手だと思います。