歯科医師臨床研修を終え、いよいよ歯科医師として本格的に勤務を始めるとき。「どんな医院に就職すればいいのだろう」「何を基準に勤務先を選べばいいのか分からない」「とりあえず条件の良い医院を探せばいい?」そんな悩みを持つ新卒歯科医師の方も多いのではないでしょうか。
新卒で入職する医院は、その後の歯科医師としての診療スタイルや考え方にも大きく影響します。給与や休日などの勤務条件はもちろん大切ですが、新卒の就職先選びでは、「自分がどんな歯科医師になりたいのか」という視点も非常に重要です。
今回は、新卒歯科医師が勤務先を探す主な方法と、それぞれのメリット・デメリット、さらに実際に就職活動を進める際の手順についてご紹介します。
目次
新卒歯科医師が勤務先を探す5つの方法
① 就職フェアに参加する
歯科医師向けの就職フェアには、複数の歯科医院や医療法人が参加しており、一度に多くの医院の話を聞くことができます。
最大のメリットは、自分では知らなかった医院と出会えることです。求人票だけでは分からない医院の雰囲気や考え方を、院長や勤務医、採用担当者から直接聞くことができるため、就職活動の入り口として利用しやすい方法です。
一方で、多くの医院の話を一度に聞くため、「どの医院も良く見えてしまう」ということもあります。
就職フェアは、その場で勤務先を決める場所というよりも、「自分の知らなかった医院や働き方を知る場所」と考えるのがおすすめです。説明の上手さやブースの華やかさではなく、「もっと詳しく知りたい」と思える医院を見つけられたら、それだけでも参加する価値は十分にあります。
② 研修をしていた医院にそのまま残る
研修先の医院や病院にそのまま勤務する方法もあります。
すでに診療方針やスタッフ、職場の雰囲気などを理解しているため、入職後のギャップが少ないことが大きなメリットです。指導してもらった先生との関係もできているため、安心して勤務をスタートしやすいでしょう。
ただし、研修先しか知らない状態で就職を決めてしまうと、「他にはどんな医院があるのか」を知らないまま勤務先を決めることになります。
研修先は慣れている分、どうしても安心感があります。しかし、「働きやすい場所」と「これから歯科医師として成長できる場所」が必ずしも同じとは限りません。「慣れているから残る」ではなく、「ここで働くことが3年後、5年後の自分につながるか」という視点で考えてみることが大切です。
③ 先輩や知人から紹介してもらう
大学の先輩や研修先の先生、知人の歯科医師などから医院を紹介してもらう方法です。
実際に勤務している人や、医院のことをよく知っている人から話を聞けるため、求人票だけでは分からない情報を得られることがあります。信頼できる先輩からの紹介であれば、安心感もあるでしょう。
一方で、「紹介してもらったから断りづらい」という状況になることもあります。
先輩にとって良い医院が、自分にとっても良い医院とは限りません。紹介は、医院選びの大きなきっかけになりますが、紹介してくれた人との関係と、自分の就職先選びは分けて考える必要があります。「紹介だから断りにくい」という理由で就職先を決めてしまわないことも、大切なポイントです。
④ 自分で求人票を見て探す
求人サイトや歯科医院のホームページなどから、自分で勤務先を探す方法です。
勤務地、給与、休日、診療内容など、自分の希望条件から自由に医院を探せることがメリットです。最近では、教育体制や症例数、勤務している歯科医師の紹介などを詳しく掲載している医院もあります。
ただし、求人情報に掲載されている内容だけで医院の実態を判断するのは難しい面もあります。「教育制度あり」と書かれていても、その内容は医院によって大きく異なります。
求人票は医院を知るための大切な情報源ですが、あくまでも「入口」です。例えば「教育制度あり」「高収入」「完全週休2日」と書かれていても、その実際の内容や運用方法は医院によって異なります。求人票に書かれている“言葉”ではなく、その中身まで確認することが、就職後のミスマッチを防ぐポイントです。
⑤ 就職コンサルタントに相談する
歯科医師専門の人材紹介会社や就職コンサルタントに相談する方法もあります。
自分の希望や将来像を伝えることで、それに合った医院を紹介してもらえることがメリットです。また、自分では直接聞きにくい給与や勤務条件、教育体制などについて確認してもらえる場合もあります。
特に、「自分に合う医院が分からない」 「求人が多すぎて選べない」 「初めての就職活動で何を確認すればいいのか分からない」という方にとっては、一緒に整理してくれる人がいることは大きなメリットでしょう。
ただし、紹介会社によって持っている求人やサポートの方法は異なります。
就職コンサルタントは、自分では気づかなかった選択肢を広げたり、希望条件を整理したりするために活用するものです。大切なのは、「この医院がおすすめです」という言葉だけで決めるのではなく、「なぜ自分にこの医院が合うのか」をきちんと説明してもらうこと。最終的に就職先を選ぶのは、あくまでも自分自身です。
求人を探す前に、まず考えてほしい3つのこと
新卒の就職活動というと、すぐに求人サイトを見たり、就職フェアへ行ったりしがちです。しかし、その前に一度、自分自身について考えてみてください。
① 自分はどんなタイプなのか
まず考えてほしいのが、自分自身の性格やタイプです。例えば、
じっくり教えてもらいながら成長したいタイプ
ある程度自分で考え、どんどん経験したいタイプ
大人数の大型医療法人が合っている
院長との距離が近い小規模な医院が合っている
これは、どちらが良い・悪いという話ではありません。同じ医院でも、「とても働きやすい」と感じる人もいれば、「自分には合わない」と感じる人もいます。
大切なのは、自分に合う環境を知ることです。
② 将来、どんな歯科医師になりたいのか
次に考えたいのが、将来の歯科医師像です。
一般歯科を幅広く診療できるようになりたい。
インプラントや矯正など、専門性を高めたい。
将来開業したい。
勤務医として長く働きたい。
子育てと両立しながら働きたい。
現時点ではっきり決まっていなくても構いません。ただ、「今の自分がどちらの方向へ進みたいのか」を少し考えておくだけでも、医院選びの基準は大きく変わります。
③ 絶対に譲れないことは何か
希望条件をすべて満たす医院を探そうとすると、なかなか勤務先を決められなくなってしまいます。そこで、「これだけは譲れない」という条件を考えてみましょう。
例えば、教育体制、診療内容、勤務地、休日、勤務時間、給与などがあります。
その中から、自分にとって優先順位の高いものを整理します。「絶対条件」と「できれば希望する条件」を分けておくと、医院を比較しやすくなります。
実際の就職活動はこの順番で
自分自身について整理できたら、実際に勤務先を探していきます。
まずは、自分がどんな環境で働きたいのかを考えます。
次に、将来どんな歯科医師になりたいのか、そのためにどんな経験を積みたいのかを考えます。
そして、勤務地や診療内容、教育体制、休日など、自分が絶対に譲れない条件を整理します。
そのうえで、就職フェア、求人サイト、紹介などを利用しながら候補となる医院をいくつか挙げていきましょう。
候補が決まったら、実際に医院見学や面接へ進みます。
新卒の医院選びは「見学」がとても大切
新卒歯科医師の就職先選びでは、求人票だけで勤務先を決めないことをおすすめします。実際に医院へ行くと、
院長や勤務医の先生はどのように話しているか。
スタッフ同士の雰囲気はどうか。
患者さんへの対応はどうか。
若手歯科医師がどのように診療しているか。
忙しい時間帯に院内がどのような雰囲気になるのか。
といったことが見えてきます。また、新卒の場合には、「何を学べるか」だけではなく、「どのように教えてもらえるか」も重要です。
研修制度があるかどうかだけではなく、誰が指導するのか、どのくらいの期間指導してもらえるのか、どの段階から患者さんを担当するのかなども確認しておきましょう。
給与だけで決めないことも大切
もちろん、給与は勤務先を選ぶうえで重要な条件の一つです。ただ、新卒の時期は、歯科医師としての基礎をつくる大切な時期でもあります。給与が数万円高い医院と、自分がしっかり成長できる医院。この二つで迷ったときには、数年後の自分にとってどちらがプラスになるのかという視点でも考えてみてください。
最初の勤務先ですべてが決まるわけではありません。しかし、最初の数年間でどのような診療を経験し、誰から何を学ぶかは、その後の歯科医師人生に少なからず影響します。
新卒歯科医師の就職先選び Q&A
就職フェア、研修先への就職、先輩や知人からの紹介、求人サイト、就職コンサルタントなど、さまざまな方法があります。ひとつの方法に絞らず、複数の手段を使いながら自分に合う医院を探すことが大切です。
まずは、自分がどのような環境で働きやすいのか、将来どんな歯科医師になりたいのかを考えてみましょう。そのうえで、教育体制や勤務地、休日など、自分にとって譲れない条件を整理しておくと医院を比較しやすくなります。
研修先は診療方針や人間関係を理解しているため、安心して勤務を始めやすいというメリットがあります。ただし、「慣れているから」という理由だけで決めず、3年後、5年後の自分の成長につながる環境かどうかも考えることが大切です。
「教育制度あり」「高収入」「完全週休2日」などの言葉だけで判断しないことが大切です。同じ表現でも実際の内容や運用方法は医院によって異なるため、求人票に書かれている条件の中身まで確認するようにしましょう。
給与や知名度だけでなく、「ここでどんな経験が積めるか」「誰から何を学べるか」という視点を持つことです。最初の数年間で身につける診療スタイルや考え方は、その後の歯科医師人生にも大きく影響します。
まとめ
新卒歯科医師の勤務先の探し方には、就職フェア、研修先への就職、先輩からの紹介、求人サイト、就職コンサルタントなど、さまざまな方法があります。大切なのは、「どの方法で探すか」だけではありません。
勤務先を探し始める前に、
① 自分はどんな環境が合っているのか。
② どんな歯科医師になりたいのか。
③ 何を大切にして働きたいのか。
この3つを考えておくことです。
そして、気になる医院が見つかったら、実際に見学して自分自身の目で確かめてください。
「有名な医院だから」 「先輩に勧められたから」 「給与が高いから」だけではなく、「ここなら歯科医師として成長できそう」 「この先生のもとで学びたい」 「自分が働いている姿を想像できる」そう思える医院を見つけることが、新卒歯科医師の就職先選びではとても大切です。
